相続登記
相続の手続きでは、不動産の登記が問題になることがあります。不動産が相続財産に含まれていた場合、故人の名義から相続人の名義に、登記名義を書き換える必要があるからです。ここでは、相続の手続きでは欠かせない相続登記について解説します。
そもそも相続登記とは
相続登記とは土地や建物といった不動産を、故人から相続人の名義に書き換えることをいいます。登記名義の書き換えは義務ではありませんが、実務上不動産の登記はきわめて重要なものです。登記の名義人が対外的には、不動産の所有者とみなされるからです。
したがって故人名義の登記が残ったままだと、不動産の売却ができないなどの弊害が出てきます。また亡くなった人の登記名義を何十年も放置しておくと、その間に第二、第三の相続が起きて1つの不動産に絡む関係者が増え、手続きが一層ややこしくなってしまうおそれもあります。そのため相続が起きたら、できるだけ早く不動産の登記名義の書き換えをするのが望ましいといえるでしょう。
相続登記を行うべき人は?
相続登記を行わなければならないのは、原則として不動産を相続することになった人です。また遺言執行者がいる場合は、遺言執行者も相続登記を申請できます。
なお、基本的な不動産の相続パターンとしては、次の2つが考えられます。
遺言で相続する人が決まっている場合
特定の人に不動産を相続させる旨の遺言があった場合、遺言で指定された人がその不動産を相続することになります。
遺産分割協議で相続する人を決める場合
遺言がなかった場合は法定相続となるが、法定相続で決められているのは割合のみです。したがって、相続人同士の話し合い(遺産分割協議)によって誰がどの財産をもらうかを具体的に決める必要があります。遺産分割協議がまとまった場合、当該不動産を受け継ぐことになった人が不動産をもらうことになります。
不動産の共有に注意
ちなみに、あえて不動産を特定の人の単独所有にせず、複数の相続人で共有することもできます。
遺産分割の後も共有したままにしておいたり、法定相続で自分の持ち分だけ先に登記したりといったことも可能といえば可能です。
ただ不動産を共有にしておくと、後の管理や処分などが面倒になります。また再度相続が起きた場合に相続人の数が増え、手続きが煩雑になるおそれもあります。すぐに売却するなどの事情がない限り、不動産の共有は避けるのがベターといえるかもしれません。
相続登記の手続きについて
相続登記の申請は、不動産の所在地を担当している法務局で行います。自分で行うことも可能ですが、司法書士のような専門家に任せる方がよいと思います。
人に任せるか自分でやるかは相続人の意思に任されていますが、いずれの場合もあらかじめ必要な書類だけはそろえておきましょう。
必要な書類
相続登記の手続きで必要となる主な書類としては、次のようなものが挙げられます。
- ・遺産分割協議書・遺言書・検認調書
- ・被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本
- ・住民票の除票
- ・法定相続人全員の戸籍謄本
- ・新しく名義人になる人の住民票
- ・固定資産評価証明書
不動産の相続で知っておきたいこと
不動産の分け方としては、そのまま特定の人に不動産をあげるパターンのほかにも、売却して得た代金を分ける、といったパターンも考えられます。
不動産以外にめぼしい財産がない場合、不動産をもらった人とそうでない人ではもらえる財産の額に大きな差が出てしまいます。その場合、不動産をもらった人が他の人にその分のお金を渡して精算することになりますが、それだけの現金がないときは不動産を処分してお金を作る、といったことも考えなければなりません。それぞれの家庭の事情に応じて、望ましい不動産相続の形は変わってくるものです。
できれば相続が起きる前に、一度ご家族で話し合っておくことをおすすめします。
不動産の相続で困ったことがあったら
相続では不動産の処分のほかにも、遺産の分け方や遺言などをめぐってトラブルが起きることがあります。
不動産の相続手続きについては司法書士、というイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、トラブルの種がありそうなときについては司法書士だけでは対応しきれない可能性があります。不動産の相続であっても、何か不安なことがあったら一度弁護士に話を聞いてみるのもよいかもしれません。裁判手続き以外にも、相手との交渉、法律上の具体的なアドバイスなど、弁護士の業務は多岐にわたります。
司法書士など他士業と連携して動くことも可能ですので、どうか気軽にお話を聞かせていただければ幸いです。