相続財産の調べ方は?そもそも何が遺産になるの?【弁護士解説】 |埼玉県、蓮田市・白岡市の相続に経験豊富な弁護士

相続財産の調べ方は?そもそも何が遺産になるの?【弁護士解説】

相続が起きた場合、相続人は被相続人から何を引き継ぐことになるのでしょうか。
一般的には預貯金、不動産といったものをイメージしますが、那賀島弁護士いわく「実はそれだけではない」といいます。
「遺産がもらえそうだから」という理由でなんとなく相続してしまうと、思わぬ不利益を受ける可能性もあるようです。
後悔しない相続をするためには、何が相続の対象になるのかをきちんと把握するところから。
そこで、今回は、相続財産の対象になるもの、さらに相続財産の調べ方について那賀島弁護士に伺いました。
 

事例

疎遠な関係だった実の父親が、先日車にはねられて亡くなったという連絡を受けました。
連絡をくれたのは父親の内縁の妻を名乗る人ですが、「マイホーム以外の財産はほとんどないので遠慮してくれないか」といわれました。
ただ、実の父親は商社を定年まで勤め上げたらしく、それなりに資産があったのではないかと思います。
一方的な説明をされても納得できませんし、正直不誠実だと思います。
相手に不信感を持っているので、きっちり法定相続分を請求したいです。
 

相続人は誰か?

ーまず前提を確認したいのですが、今回のケースですと相続人は誰になるのでしょうか。
 
内縁の配偶者には相続権は認められていません。
したがって、今回の相続人は被相続人の実子である相談者さんのみということになります。
しかも遺言もないので、相談者さんが相続した場合は相談者さんの取り分が100パーセント、内縁の配偶者は何も受け取ることはできません。
ちなみに、内縁の配偶者が相続人の方に「相続を遠慮してほしい」とお願いしてくるケースは結構あります。
 
ー内縁の配偶者の言い分を聞いて、相続人が折れてくれる場合って結構あるんですか?
 
小さい頃から交流があるような場合だと、うまく話し合いがまとまることもありますね。
ただ、「もらえるものはもらっておこう」ということで、相続人がふつうに法定相続分を主張してくるケースも多いです。
今回のような場合、相続を遠慮してしまうと、事故の賠償金を相手の保険会社から受け取れなくなってしまいます。
弁護士の立場としては、「賠償金を受け取るためにも、相続した方がいい」とアドバイスすることが多いでしょうね。
 
ー交通事故の賠償金を受け取れるかどうかって、相続が関係しているんですね。
 
そうなんです。
実は故人が持っていた「交通事故の賠償金を加害者に請求できる権利」は相続の対象になるんですよ。
 

相続の対象となるものとは?

ー賠償金を請求する権利も相続の対象になるんですね。
 
金銭的な価値を持つ債権になりますから。
相続が起きた場合、相続人は被相続人の持っていたプラスの財産、マイナスの財産すべてを引き継ぐことになります。
プラスの財産は、預貯金や株式、不動産などです。
また、今回は交通事故で亡くなられたということですので、事故の加害者に対して損害賠償金を請求する権利も相続の対象になります。
 
ー生命保険金や労災の給付はどうでしょうか?
 
亡くなった本人が受け取る予定だったものは相続財産になりますが、遺族が受取人になっていた生命保険のように、もともと遺族が受け取ることになっていたお金は遺産ではなく、遺族固有の財産として扱われます。
 
ー相続の際に気にしなくてもいい財産もあるんですね。マイナスの財産についてはどうでしょうか?
 
マイナスの財産の具体例としては、借金や税金の支払いがあげられます。
 
ー借金も相続してしまうんですね。それでは、住宅ローンなんかも……?
 
そうですね。
今回の事例だとマイホームがあるとのことで、住宅ローンが残っている場合はそのローンも相続の対象になります。
ただ、住宅ローンの場合、ローンを組む際に団体信用生命保険に加入していることが多いと思います。
その場合、ローンを組んだ方が亡くなれば、保険金でローンを一括返済できますので。
住宅ローンは問題になりにくいと思いますね。
事業資金の借り入れであるとか、個人間の借金などのほうが問題になると思います。
ちなみに、マイナスの財産がプラスの財産より明らかに多いといった相続したくない事情がある場合には、相続をしない(相続放棄する)という選択をすることも可能です。
 
ー相続しないこともできるんですね。ただ、今回の場合、故人と相談者が疎遠な関係とのことで、故人の財産の内容がよくわからないところがありますよね。そうなると、放棄するのか相続するべきか、判断が難しいなと思うんですが……。
 
死亡事故でお亡くなりになられた場合だと受け取れる損害賠償金の額が大きくなるので、そのまま相続するケースが大半だと思います。
相続放棄をすると、損害賠償金(相手方の保険会社から支払われる保険金)も受け取れなくなってしまいますから。
でも、そうですね。
多額の借金があったという可能性もないわけではないので、財産の内容はきちんと調べてから相続するかどうかを考えるべきでしょう。
 

財産調査って何をすればいいの?

ー先ほど、財産の調査という話が出ましたが、具体的に何をすればいいんですか?
 
まず、マイナスの財産ー借金は信用情報機関に照会する、督促状を探す、といった方法で見つけることができます。
プラスの財産は、不動産であれば固定資産台帳の名寄せ帳を取り寄せる、預貯金であれば心当たりのある金融機関に問い合わせて取引履歴を取り寄せる、といった感じでしょうか。
 
ー結構アナログな作業になるんですね。
 
そうなんですよ。
相続人の立場であれば自分でも調査はできますが、結構大変です。
ただ、相続関連の話は誰かひとりの言い分を信用してしまうのも怖いものです。
 
ー相手がうそをついている可能性もありますものね……。
 
ええ。
だからこそ、相手と話し合いをしながらも自分でもきちんと調査した方が無難だとは思います。
財産調査は弁護士に依頼することもできますので、困ったことがあれば一度相談していただけるといいかもしれません。
 

相続財産の調査はいつまでに終わらせればいい?

ーちなみに、相続財産の調査には期限のようなものはありますか?
 
相続調査の期限を考える場合に、まず気にしないといけないのは、相続放棄の期間制限との関係です。
相続放棄には3ヶ月の期間制限があるので、相続放棄する可能性がある場合は、3ヶ月以内に調査を終わらせないと相続放棄が間に合わなくなるリスクがあります。
次に考えなければならないのは、相続税の申告期限です。
これは相続開始後10ヶ月が期限になります。
相続放棄をしないと決めた場合も、相続税の申告期限に財産調査を終わらせないと、相続税の支払いに支障が出てしまう可能性がありますね。
 
ー3ヶ月、10ヶ月というのがひとつのメルクマールということですね。ちなみに、遅くとも10ヶ月以内に調査を終えなければならないとなると、交通事故の保険金の扱いはどうなるんでしょうか。保険会社との示談がまとまらず、保険金の総額がわからないという可能性もあると思うんですが……。
 
交通事故の被害者が死亡したことに対して支払われる損害賠償金は相続税の課税対象から外れるんですよ。
ですから、10ヶ月の制限を気にしなくても大丈夫です。
 

弁護士からひとこと

スムーズに相続の手続きを進めるためにも、財産調査は欠かせないものです。
相続放棄の期限、あるいは相続税の申告期限に間に合うように迅速に動く必要があります。
もし当事者だけで調査を進めるのが難しい場合は、弁護士に依頼することも可能です。
弁護士に依頼すれば、弁護士会照会を利用することで調査できる範囲が広がるケースもありますので、困ったときは気軽にご相談いただければと思います。
なお、今回のような内縁の配偶者がいる事案では、相続人と内縁配偶者の関係も問題になります。
内縁配偶者には遺産の相続権はありませんが、その人との関係性によっては「内縁の配偶者にも、一部財産をあげたい」という話になることもあるでしょう。
その場合、相談人がいったん全ての財産を相続して、改めて内縁の配偶者に贈与する形になります。
そのため贈与税を支払わなければなりません。
その他さまざまな法的な問題が生じうるところだと思いますので、不安を感じた時点で弁護士に一度ご相談いただければ幸いです。

その他のコラム

兄に嘘をつかれて遺産分割協議書にハンコを押してしまった!相続のやり直しはできる?【弁護士解説】

「内容をよく確認しないまま、遺産分割協議書にハンコを押してしまった」という内容の相談は、当法律事務所でもよくあります。   一度成立してしまった遺産分割協議をやり直すことは容易ではありませんが、他の相続人に嘘をつかれていたなどの事情がある場合には遺産分割協議の無効を主張できることも。   今回は、遺産分割協議をやり直せるケースや他の相続人に遺産分割協議書を渡された場合に

自分の遺産をあげたくない子どもがいる場合の相続【弁護士解説】

終活を始めるにあたって、遺言について考える方も多いと思います。 しかし、相続では遺言さえあれば基本的に本人の意思が優先されるとはいえ、本人の希望によっては相続人の反発を招いて「争族」になってしまうリスクも否定できません。   特定の子どもだけに相続させたい、といった不平等な内容の相続を考えている場合は、なおさらです。   今回は、相続させたくない子どもがいる場合に取り

「長男だから遺産を全部ほしい」という言い分は通る?【弁護士解説】

現在の法律では、相続で子どもは全員平等です。 ところが、実際には法律のとおり、スムーズに話し合いが進むケースばかりではないようです。   「長男だから全部遺産はもらう」「親に遺産をもらう約束をした」と言い張る兄弟がいた場合、残りの兄弟姉妹としてはどう対応すればいいのでしょうか。   「俺は長男だから!」と主張する兄弟がいた場合の相続について、那賀島弁護士に伺いました。

モメそうな相続こそ遺言執行者を【弁護士解説】

資産が多い、相続人や利害関係者が多数いる、家族関係が複雑だ……こういった事情を抱えた相続は、たとえ遺言を作ったとしても相続の手続きが紛糾しがちです。 そこで、重要となるのが、遺言の内容を粛々と実現してくれる遺言執行者の存在です。 遺言執行者とは何者なのか、どんなときに必要なのか。 遺言執行者が必要となるケースやその仕事内容について那賀島弁護士に伺いました。   事例 私は70

配偶者居住権とは?ステップファミリーの増加で出番が増える?【弁護士解説】

平成30年の相続法改正でスタートした配偶者居住権制度。 夫(妻)に先立たれた配偶者の暮らしを守るための制度ですが、実際の使い勝手はどうなのでしょうか。 制度の概要や使い所、今後の展望などについて、那賀島弁護士に伺いました。   事例 私は70代の女性です。 先日、35年間連れ添ってきた夫が突然亡くなりました。 相続人は私、私と夫の子ども1人、そして夫が前妻との間に子どもが2

相続・遺産分割の問題、お気軽にお問合せください。